2023年9月7日木曜日

Tootsie - What's Gonna Happen

サンディ・レスター:
どうなるかはわかってるの
私は眠ろうとするんだけど
頭の中では失敗への恐怖が
オオコウモリみたいに飛び回ってる
30分だけ眠ったところで
6時の目覚ましが鳴って
石でも飲み込んだみたいな心地で
シャワーを浴びて目を覚ますの
だから朝食なんて食べられない
せいぜいお茶を飲むくらい
内視鏡検査を受ける時みたいにね
ちなみにそっちの方がまだマシよ
絶対に受かりっこないって知りながら
オーディションを受けにいくのと比べたら

なんにせよ私はオーディションのためにダウンタウンへ向かうの
私の不安がすべて現実となる場所にね
それでどうなるかって言うと
お腹を空かせた私が力なく会場に入ったら
私に似てるけど私より10歳は若そうな女の子たちが
12人くらいいる
私は化粧室に行って発声練習をする
「ミンガ・ミンガ・ミンガ・ミンガ・ミン」って具合に歌うけど
聞こえるのは「サンディはダメ てんでダメ 本当に全っ然ダメ
おまけに歳くってるし ダサいし」そしたら誰かが私の名前を呼んで
するとどうなるかっていうと
部屋に足を踏み入れた私を
気持ち悪い蛍光灯の明かりがお墓のように歓迎する
みんな笑顔で「はじめまして」って言うけど
私の目にはみんなスカリア判事にしか見えない
それからちょっと雑談なんかしながら
じろじろと品定めされて
私は不安と自己嫌悪の霧の中をなんとか手探りして
自分が賢くて愛嬌があって一緒にいて楽しい人間だと
彼らに思いこませようとする
でも化けの皮が剥がれようとしてるのがわかる
頭の中で木槌の音が響く

有罪!
そういって厳しく罰せられるの だって私は
有罪!
のこのこ現れて皆の時間を無駄にする罪で
有罪!
他にもおよそあらゆるショービズ界における罪で
若くない 細くない 美人じゃないし 上手くもない
判決を言い渡します
主文、被告人を生涯ずっと給仕バイトをしながら自己嫌悪に苛まれ続ける刑に処す

マイケル・ドーシー:
サンディ…

サンディ:
ちょっと待って 誰かが私に
「では歌声をきかせてもらっていいかな」って言ってる
私は「仕方ないですね」なんてサムい軽口で笑いを取ろうとしつつ
ピアニストに頷いてみせる
彼はいっつも黒い服を着てて
いつもタートルネックの背中にフケが落ちてる
すぐに私は音程をとって歌いだす
すると当然それまで当たり障りない事しか言ってなかった
アシスタント・ディレクターの親指がiPhone画面を動き回るのが見えて
彼はきっと「下手くそすぎて草」とかツイートしてるんだって
私にはわかるの
「彼女 実力ないし見せかけだけ トニー賞なんか無縁だな」
そうして今 私はなじみ深い場所にいる
現世を離れて 地獄へやってきた
あとちょっとで気を失いそう
でも私が死ぬ その寸前に
私はいつもの使い古した歌を唄い終える
誰かが私に「ありがとう」と言って
壮健を祈られる
ふと気が付けば私はタコ・ベルにいて
口いっぱいに肉を詰め込んでる

焦っちゃいけないってわかってるの
よりよい自分でいようと努めてる
暗く悲観的にならず
もっと聖人君子みたいになろうと
エックハルト・トールの本を読んでるの
彼の言ってることとてもわかりやすいわ
仏教の鈴を買ってみたのよ
心をリラックスさせるのにいいらしいの

私にはこれっぽっちも効かない
床に座り込んだ私の脳裏には
過去の死ぬほど恥ずかしい失敗が
次々と鮮明によみがえっていく
そして思うの
これ以上の恥辱を上塗りしたがるなんて
どんなマゾヒストだよって
だって私にはわかってるんだから
いっつもその通りになるのよ
だって私はいつも
いっつも
マイケル! 黙ってて!

私にはどうなるかわかってるの
わかってないなんて言わせない
いつか日の目を見るとか言わなくていい
だってそんなの無理なんだから
才能があるだの 心が優しいだなんて言葉いらないの
私は賢いだなんて 言われなくてもわかってるのよ
ええ 私は賢いから自覚できてるの
クソみたいな食生活でダイエットできるわけない
と素直に認められないくらいに自分はバカだってこと
大切なのは
潔くあきらめて荷物をまとめるタイミングを
見誤らないこと

あなただってわかってるでしょ
私にはわかるのよ
よし こうするわ
私 辞める!
辞めてやる!
辞ーめた!

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